小説:我孫子武丸「凛の弦音」(光文社)

我孫子武丸「凛の弦音」(光文社)

今年は弓道をメインに扱った小説が多いですね。

中学の時から弓道をしている女子高校生・凛が主人公。

顧問を辞めた弓道部の恩師の家にある弓道場で、矢で人が殺される事件が発生して、先生が疑われるが、凛の指摘で真犯人を突き止める。

そんなこともあって学内新聞で大きく取り上げられてしまって目立つことになってしまう。当の放送新聞部篦、先輩中田も、凛や部長の弓道の活動を撮りたいといってビデオカメラを持って日参し、ネットに上げられた動画で密かに話題に。

指導者不在の中、新任の先生が弓道指導者として入ることになり、斜面打ち起こしでバンバン中てる姿に部員は熱を上げるが凛はしっくり来ない…。

前の先生から射品射格を言われてきたので、的中優先に見える新しい先生に疑問を持ったり、みんなが斜面に変えて的中が増えてるのに自分はスランプで悩んだり弓引きにありがちな悩みとか、凛をライバル視する他校の女子が出てきたり、大きな事件は起きないものの展開は弓道べったりで楽しい。あまり細かい弓道解説もないし。

以下ネタバレ的な話になるけど、難を言えば、代表選手になるほどでもない割りに凛が割と上手いあたりで、中学のうちに弐段まで取ってたり、自己ベストは射詰め20射だとか、レベルを高く設定し過ぎでは、と思える辺りか。

また、自分は射品射格を目標にしてきたけど(注:あくまで弐段です)、ライバルと対戦したときにライバル自身が映像を見返して凛の射に負けたといってくるところとか。射の違いは、見れば判るものだけど、違いは判ってて自分の射を選んでたのでは?と思った。

とは言ってもそれが作品の魅力を損ねるわけではない。まあ、ドラマ向きだなと思った。

あとがきで作者が書いてるけど、奥さんが弓道五段で、作者も弓を初めて初段になってるとのことで、弓の描写は安心して読めます。

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