2010-10-27(水) [長年日記]
_ 片川優子『ジョナさん』(講談社文庫)
『佐藤さん』の片川優子、2冊目の文庫化。
同居していたおじいちゃんが死んでから、おじいちゃんの話題はタブー。大事にしていたペットの犬の大次郎にもみな関わりたくないので高2の主人公チャコがしかたなく散歩の担当になっている。散歩の行き先、ゲートボール場でふと出会った青年に一目惚れをするチャコ。名前も知らないけども浮かれるチャコに、とりあえず名前がないと困るからと「ジョナさん」と仮の呼び名をつける。
そんなとき、親友のトキコが受験しないと言いだしたので動揺するチャコ。別に同じ進路を目指していたわけではないが、トキコの家が母子家庭で母親がホステスをして、母親とはチャコも仲良くしているので偏見ももって無いつもりだったが、そういうことをふと思ってしまって自己嫌悪になってるところでトキコと大げんかになってしまい…。
恋愛とか進学の話が表にあるんだけど大事なことはそれじゃなくて作者があとがきでも言っていた、いつの間にか忘れてしまった想いなのだが、この中ではトキコがチャコの代わりに憶えてくれている人だよなあ。
作品の舞台がJR横浜線の鴨居で、たまに菊名(のジョナサン)だったりして、昔菊名で乗り換えて鴨居の某工場に通ってた身としてはものすごく身近な気がする。。。
初めて読んだ『佐藤さん』は文庫の表紙がむっちゃよかったのもあって好きな作品なのだが、他の本が置いてないのでちょっと困ってたのだよね。他の本も文庫になって欲しいところ。まあ近刊は単行本で読むけども。。。
片川優子のデビューは早くて、『佐藤さん』が中3のとき、『ジョナさん』が高2-高3の受験の合間の作品と聞くと、すごい、と思う。技巧的ではないけど、また描かれている主人公達や悩み事はその頃の作者の学年とリンクすることも多いけども、あくまで抑制されていて、当事者が書いたから「中高生の生の声」だという様なものにもなっていない。言われないと年齢はわからない。