2005-05-08(日) [長年日記]
_ 金井美恵子『目白雑録 (ひびのあれこれ)』
読みかけになっていた金井美恵子のエッセイ『目白雑録 (ひびのあれこれ) 』の残りを読む。書評ではなくエッセイなのだが相変わらず悪口が多いというか意地悪で、ひとに対して容赦が無い。まあ相手としては島田雅彦が頻出しているのだが。
中にも出てきたが、小学生の時からそんな感じで母親から「雀百まで踊り忘れず」といわれたとかなんとか。50もすぎたのでやめようかと思ったが経験に基づいた批判もできるので、と変える気はなさそう。
それはそうとしてちょっとおかしかったのは、「手入れをする」というとを若い人たちが「ガサ入れのことですか?」と聞き返してくる、というあたり。
結局夜中までよんでしまい、後ろに宣伝が載っていた『彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄』という、いかにもゴダールなタイトルの小説も読みたくなってきた。『小春日和(インディアン・サマー)』の続きのようだけど。、一体どこにしまったっけなあ…。
_ 萩尾望都のバレエ作品
読み終わったのがもう2時だか3時だかという時間だったのだけど、なんか寝る気になれず、枕元にあった萩尾望都の旧作を読みなおす。
『フラワー・フェスティバル』『感謝知らずの男』『ローマへの道』『青い鳥』と一時期続いていた、バレエ・ダンス系の作品シリーズ。
出た当初は何となくなじめなかったのだが、読むとやっぱり味がある(『残酷な神が支配する』はとうとうなじめないままだったけども)。
『フラワー・フェスティバル』『ローマへの道』もともに家族というか生みの親探しみたいなのが底流にあって不安要素にもなってるわけですが、『フラワー・フェスティバル』が割と明るいのに比べて『ローマへの道』はライバルや恋人が先に注目されたりして焦っている主人公が嫉妬込みでだんだん八つ当たりしていくところがつらい。彼女を何度かの喧嘩で殺しかけてしまったあとで謝ろうとして「愛してる?なぜなぐるの?あたしはサンド・バッグなの?」「あなたには愛なんかない」「あなたは人生において愛を学ばなかったのよ…!」と拒絶される。
死んだと知らされていた主人公の実の母親は亭主を殺して刑務所に入っていたことを知って、それ以来ふたりの共通の楽しみが悪い思い出を連想させるものになっていたのだった。母親のことを聞かされた彼女が喧嘩のきっかけになった自分のことを思い出してやり直そうとするが…。と、悪いことが重なってしまう流れを見せているのはさすが。
上の喧嘩のセリフと、よりを戻したあとに「なぜ僕を待ってたの」ときかれて「うーん?」と首をかしげる姿のかわいさ、この辺りだけは憶えてるのだった。
『ローマへの道』では話のわかる助演男優という感じで登場しているレヴィは『感謝知らずの男』では主人公だった。人間嫌いでえらそうなタイプ。その中でも『オオカミと三匹の子ブタ』はわりと好きな話で、自分がうまいからとパートナーの女の子に容赦なく毒舌をはいていたら、新しいパートナーのジュンと組んで以来自分がダメ呼ばわりされる羽目になってしまい自信喪失に。おまけに公演前日使ったシャンプーで顔にアレルギーを起こして踊れなくなってしまってジュンに愛想を尽かされる。このまま負けるのはいやだと念じていたらこけの一念でアレルギーが治まって舞台に登場…。
なぜかここでモチーフになってるのがルームメイト?が飼ってるイグアナだったりして、ちょっと変だけど『イグアナの娘』ともつながってるのかしらんと考えてみたり。