2009-10-04(日) [長年日記]
_ 雫井脩介『犯人に告ぐ(上)(下)』(双葉文庫)
雫井脩介の『殺気!』を読んでまた他にも読みたくなったものの、警察もの(捜査もの)がそんなに読みたいわけでもないので既刊は敬遠してたのですがなんとなく代表作をさけるのも何かと思って手を出しました。
あっという間に読んでしまった。
物語は、5歳ぐらいの幼児を狙った連続殺人。犯人の手掛かりもなく膠着していた現場に、事態を打開するために一人の警視が抜擢される。その男は、かつて男児誘拐事件で指揮を執ったものの犯人を取り逃し男児も殺害されてしまい、マスコミの前で理不尽に責められたことがきっかけでキレてしまって左遷された巻島だった…。
巻島を陣頭に警察がとった手段は、警察がTV番組に出ることで犯人からの接触を待つ「劇場型捜査」だった。
こういう主人公、最近の作品だと五條瑛『ROMES06』の主人公成嶋優弥にちょっと似てるなあ。周りからは秘密主義だとか独善だとか言われながら内部の敵も探りつつ…。
ちがうのは、『ROMES06』のほうは主人公の狙いが直接書かれていない(勘のいい読者なら気づく)のに対して『犯人に告ぐ』は主人公の動きと、嵌められる側の動きが交互に描かれてだんだん迫っているところが描かれているところか。
この作品で大藪春彦賞をとって、受賞後第一作が『クローズド・ノート』だという落差がすごい。
©vette<vette@mail.ne.jp>