2010-02-19(金) [長年日記]
_ 石持浅海『リスの窒息』(朝日新聞出版)
石持浅海の最新刊ハードカバー。
いつも文庫化ノベルスに落ちてから買ってたので単行本で買うのは初めてか。
話は、新聞社の読者のおたよりの部署に、有名女子高の生徒を誘拐したという身代金要求の脅迫状が届いたところから。さっさと警察に通報すればよかったのだが、警察に言うと人質を殺されそうだったことと、かつてその新聞社が関わった事件の関係で、死亡者が出てしまうことに神経質になっているという背景があった…。
と関係者がいろいろ事件を引きずってるメンバーだったり、消極的になったりで新聞社なのにただのサラリーマンのようにしか動けないところがきもだったりするのだが、今までの石持作品に比べるといまいち魅力が乏しいなあ。
今まではややSFチックな設定の『BG、あるいは死せるカイニス』や『ガーディアン』にしろ、『扉は閉ざされたまま』『月の扉』『水の迷宮』『セリネンティウスの舟』『アイルランドの薔薇』にせよ、いやいやほとんどの作品で、起きてしまった出来事について、そこに居合わせた当事者たちが頭を突き合わせて原因や動機を消去法でつぶしながら検討したり、一人だけやたらと冴えたやつがいたりして、驚くようなトリックはないものの、推理の過程を見せていたのに、今回は事件に関わっている時間が短い(大抵1日以内)という点は共通しているものの、新聞社の面々は「対策」は相談しているものの、「犯人」に迫ろうとしているのはメインの人間だけだし、決定的なヒントが出てどうこうというより早めに答えが見えていて後は行動の積み重ね、というみたいな展開で、石持浅海作品を読んだなあという感じがしない。
新聞社なのに新聞社らしくふるまえないというところを皮肉っぽく書いてるところもあるけども、それだけだとしたらつまらないし、なんか消化不良だな。
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