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煩悩日記

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2010-09-22(水) [長年日記]

_ 石持浅海『見えない復讐』(角川書店)

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つぶやいただけで日記に書いてなかった。

石持浅海のハードカバー新刊。

理工系の大学生たち3人が、大学のトップの連中に復讐を誓う。殺人を犯すことも覚悟の上。しかし大規模に仕掛けるには資金がない、ということでまずはベンチャー企業を立ち上げることからはじめることになる。資金援助をすることになったのはエンジェル投資家の小池。

その企画と熱意をみて投資することにはしたが、たまたま母校が同じ大学だった。ふと大学を訪れた小池は、彼らが妙なことをしているところを見かける。そしてその大学の自殺の名所といわれる場所に久しぶりに来た小池は彼らの狙いを知る…。

というような展開なのだが、なんとなく『撹乱者』や『この国。』の変奏のような印象もあるなー。

一見つながりのわからない彼らの行動を小池が推測して大学に報復を企てていることに気づくというあたりはいかにも石持風。謎の行動をしている側の狙いもすべて描くのは『君が望む死にかた』のような展開(まああのような「先回りして気づいてしまう恐ろしい女の子」なんてのは出てこないが)。

なんとなく読後のカタルシスが足りない気もするが。

_ 石持浅海『Rのつく月には気をつけよう』(祥伝社文庫)

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やっと文庫化された。

うーむ、これはいかにも石持浅海という感じ。

食べるために顔を突き合わせてるメンバーたちと酒の肴に出てきた話に対して安楽椅子探偵の本領発揮!というところが座間味くんシリーズのようであり、マンションの一室に集まる仲間という雰囲気がセリネンティウスのようでもあり(←まあ人が死ぬわけではないけど)。誰かの部屋に集まってうまいものを食う、ってのは『君がいなくても平気』でもそうだったけど、割と出てくるのだったかなあ、調べなおせる状態ではないのでわからないが。

でも『温かい手』、『撹乱者』、『人柱はミイラに出会う』、座間味くんこと『心臓と左手』のような、同じ登場人物がでてくる短編の連作というのは一番おいしく描けてるきがする。

最後のトリック?は、まあ途中で「これってしかけてるのかな?」とは思いましたが、でもきれいに仕掛けられてる。だまされた感がするわけでもないし、そういえば・・と思ってしまう抑制された仕掛け。

_ 飛鳥井千砂『チョコレートの町』(双葉社)

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これは今年の7月に出た本。

飛鳥井千砂は『はるがいったら』を文庫で読んでちょっと気にはなってる人なのですが、他に文庫に入ってないし店頭にも他の本がおいてないので縁がないなあと思ってたらこれは新刊がでました(2か月前の話です)。

話は、不動産屋の店長をしている主人公が、地方店で店長がちょっともめ事を起こしているので代わりにしばらく面倒を見てくれと言われるところから。その店は主人公の郷里にあるというので声がかかったのだが、主人公は故郷が好きじゃない。田舎で何もないし、あるのはチョコレート工場で、町中にチョコレートの匂いがしていて何を食べてもチョコレートの中、両親とも折り合いが悪いので気が重い。しかも郷里に帰ることがすばらしいことだと思ってる若い社員にちょっと言われて、居心地の悪さもあったり。。

で、郷里に帰ってみたら、やっぱり何も変わってないよ、と思いつつも同級生と旧交を温めているが、そこで元カノが・・・。

とかそんなこんなの話で、まあちょっとした出来事は起きるもののそんな波乱万丈ではない。

なんだかんだと嫌っていた両親も、兄貴も、常識をちょっとわきまえてなさそうな兄貴の彼女とも、和解をしたりして、彼女がそこにかかわってるところも読後感としては良い感じ。なんとなく外界の連絡役というか要所要所ででてくる本部のひとも、プライベートがちょっと分かって親近感がでたりする、、と日常のちょっとざわざわした不快がちょっと晴れた感じの描き方がよいです。

(日本語がちょっと変になった)

_ 飛鳥井千砂『君は素知らぬ顔で』(双葉社)

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これは今年の3月に出た本。買ったのは4月だったかも。

女優「ゆうちゃん」をまつわる連作になっている。といっても有ちゃんが主役ではないが。

女子中学生が友達との距離を測りそこねてとまどったり、ひきこもりの男がテレビやネット掲示板を見ながら世の中恨んでみたり、浮気がもとで離婚の危機があったり、、いろんな出来事の中で、中学生時代に「ゆうちゃん」役で名をはせた女優がからむ。なにかとゆうちゃんを励みにしたりいい子ぶってるのが気に入らないとか、話題の接点にゆうちゃんが。

こうかくとゆうちゃんメインに聞こえてしまうが、実際はバラバラな恋愛ものすべてに「TVの向こうの有名人」のゆうちゃんの話題でつながっているという感じなのだけど、再終話を読んでしまうとちょっとちがってくるのだよなあ。

お互いに関係ない話のようでちょっとずつ登場人物につながりがあって、最後も「出てきた」と思ってちょっと嬉しかった。

ひきこもりとか浮気とか嫉妬深い男とかの話は読んでてあまり楽しくもないのだが、最後まで読んだ後だと気持ち軽くして読めるなー。

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