2009-02-21(土) [長年日記]
_ 島本理生『ナラタージュ』(角川文庫)
ナラタージュ (角川文庫)
KADOKAWA
(no price)
名前しか知らない作家なのだけど、読むものを探していたので平台で目についたものを買って読んだ。
雫井脩介『クローズド・ノート』に主人公や雰囲気の静かさが似てる、と思った。
でも『ナラタージュ』の主人公は、寡黙な(というか饒舌ではない)中にも静かに熱く強い想いを抱き続けているところが非常に印象深い。
語りも控えめなのであまり気を持たせたりそれっぽく謎かけしたりしないでその時になってわかる、ということが多いのだが、主人公の泉が高校時代に気が合っていた先生を今も好きで、振られてもお互いに惹かれあっていたりするのがわかる場面が出てくると、惹かれているというプロットよりも、何かにつけてお互いに連絡をとったり、何かと助けようとしたりする場面を見ると、ああやっぱり出てきた、と安心したりするなあ。
って何言ってるか分からないな。
お互いに好き合ってるけど、先生は(教師だからという理由ではなく)一緒にはなれないということで別れるのだけど、まあこんな儀式をふんで別れるのは難しいよな、と思う。でも最後に、それ以来縁を切っていたはずの先生が自分を想い続けていることを知らされる場面はなかなかだった。 (だからと言ってかけつけることもできない主人公もまた)
_ 飛鳥井千砂『はるがいったら』(集英社文庫)
ちょっと前に読んだ本。知らない作家だが、いくえみ綾の表紙に惹かれたとも。
両親が離婚して、再婚した父親と暮らす弟・行(ゆき)と、母親についていって今は一人暮らしの姉・園。「ハル」は行が飼っている老犬の名前。
園と行は両親が別れても仲が良くて外で会っていたり、妙に自分の生活習慣や服装のコーディネートを崩そうとしない園なんかに惹かれて読んでみた。いや単に仲がいい姉弟(しかもお姉さんがきれい)というのにつられた気もするが。
大きなイベントが起きるわけでもない話なのだけど(まあ、園の周辺にはちょっとあるが)、園と行の二人のモノローグが交差して、ほかに家族や恋人が出てくるけど結構世界が狭かったり。
最後のほうで園の周辺やハルのことでちょっと騒ぎがあって、園も一部身の回りのけじめをつけたり、と波は立ったけどすぐ治まりましたという感じなのだけど読後感よし。