2010-10-03(日) [長年日記]
_ 小林泰三『天体の回転について』(ハヤカワ文庫JA)
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芸風が肌に合わないのか、どうもしっくりこなかった。芸風が大事で、そこは突っ込んじゃ駄目、みたいなところなのかなあ?
コペルニクス『天体の回転について』と同じタイトルの表題作は、科学技術を忌避して忘れてしまった人間達がいる世界で好奇心旺盛な男が拾った望遠鏡で見つけた謎を解きに「妖怪」の森に向かうというもの。
「妖怪」達に見守られながら塔にのぼるとホログラムの女性ガイドが出てきて軌道エレベータの案内をする。なぜか主人公の言葉はシステムにないので言葉が全く通じないが、読者には両方の言葉がわかる。そしてガイドが話すことは読者層には通じるレベルの話なのだが、ほとんど月や地球をみたことがなく天動説を知ってるかどうかも怪しい主人公は何となく理解したりして…。
なんか説明するとむなしくなってきた。主人公に謎なら読者にも謎のほうがいいだろうになまじ通じるせいで何も知らない主人公の理解度がおかしく見えない。それともこれは別の読み方をしないといけない話なのかしらん…。
はじめは妖怪というのが都市の人間で、主人公達は森の動物仮何かと思ったのだけど、妖怪がなんなのかわからなかった。急に訪れた主人公を軌道エレベータで月に連れて行ってくれたり、地球圏を離れる旅行にも案内してくれたりどんだけお大尽な世界なのかとか、バストイレ食事付きとはいえ何日も掛かっているのに、「数日経った」レベルの記述で終わったり(その間たいくつしなかったのかしら)、そんなことの描写が気になるのだけど、気にしたら駄目な作品なのか。
ロボット3原則を題材にした『灰色の車輪』は、ロボット3原則が守られているか確認するために「自分で自分を壊せ」と命令して実行されたことから信用するのだけど、第1、第2原則に反しない限り自分を守るんじゃないのかしらん、、と最初に感じてしまったので、「良心回路」を壊すことになって急に人間に反抗したり、性能が落ちたときのロボットの台詞はカタカナとか そんな話までどうでもよくなったり。
『あの日』は叙述トリック的なところがあるのだが(と言うか全体的にそうだけど)、罠に掛かった「先生」はなぜそれぐらい念頭にないのだろうか。先生の方は宇宙に長くなかったのだろうか。できが悪い生徒の筋書きではないが「そんなことがあることを思い至る」ようなことではない気がするのだが…。
捕食の話『性交体験者』は、手術を受けなくてもあまり事態が変わらなさそうに見える。それと、殺すことは罪に問われなくても、たぶん食いきれないなあ。何日かに分けて食ってると思えないしディスポーザーで全部始末してる?なんか隠滅しようとするとも思えないし。
とは言え、この話の筋書きは嫌いではないのだけど。
全体的に小道具は新しいがプロットは懐かしいもののような印象。「ショートショートならバランスよかったのに」と思った。
_ 香魚子/谷瑞穂『伯爵と妖精(4)』(マーガレットコミックス)
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コバルト文庫で出ているシリーズのうち「伯爵と妖精 あまい罠には気をつけて」をコミック化したもの。小説を読んでないのになぜマンガから読むかというと香魚子(あゆこ)が好きだから。
猫の姿をしたニコがしゃべるせいなのか、他の理由からか、対象年齢がやや低い印象はするのだが、伯爵とリディアの掛け合いを見てると和むのでとりあえず読むのだった。
まあ伯爵が仕掛けてるとは言え、リディアが単純なせいで諍いになりやすいのだが(傍目には痴話喧嘩に近い)。。。
_ メモ:WindowsにもATOK 2010をインストールした
日記に書いておかないと埋もれるので書いておく。
VMware Fusionで動かしている Windows Vista はいままで日本語文章の作成頻度が低いつもりだったのでMS-IMEのままだったが、ATOK 2010をいれた。
といっても定額サービスで申し込んでおくつもりだけど。
_ 泉本小夜子『退職給付会計の知識<第2版>』(日経文庫)
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たまたま見かけて買ったのだけど、年金設計わかりやすいなあ。企業年金そのものではなく退職給付会計の視点で書いてあり、変動があったとき(減額が必要なときや、基礎率、平均残存勤務期間など見直しが必要な場合など)の取り扱いや、キャッシュバランスプランやポイント制の説明や、PSL(過去勤務債務)の償却の会計上のあつかいなどがわかりやすく書かれている。(PSLを定率・定額などの方式により数年間で償却するのは知っていたが、平均残存勤務期間の範囲内、というのは知らなかった)
※仕事で企業年金に関係しているので興味を持ってるけど、企業年禁の実務担当をしてるわけではない。
この第2版は9月に出たもので、最近の改訂があるほか、IFRSのコンバージェンスで論点になっている未認識数理債務の単年度計上とかそのあたりの会計処理(B/S、P/Lそれぞれの)なんかも載ってて参考になるわ。IFRSの本って、全体を説明してるもんだから、リースとかそんなのと一緒になってて、企業年金に割いてるスペース低いからなあ。(無茶分厚い本は置いといて)
企業年金そのものについては、 久保知行『わかりやすい企業年金<第2版>』 が割といい本で、コンパクトだけど要点押さえてるしあまり細かい(数理上の)算式も出てこない。