2012-01-03(火) [長年日記]
_ 越谷オサム『陽だまりの彼女』(新潮文庫)
帯に「前代未聞のハッピーエンドへ」とか最近だと「女子が男子に読んでもらいたい恋愛小説」とか書いてあるのだけど、誇大だったり外してるとしか思えない。
仕事の取引先で出会った彼女は、中学時代に縁があった女の子。
昔は頭が悪い感じだったが、今ではてきぱきと進めていて上司にも認められているようだった。
仕事で再開したことがきっかけで急速に親密になって、結婚もするつもりで両親に挨拶に行ったところ、娘が迷惑をかけているのではないかと言われて反対されてしまう。こんなにしっかりした彼女なのになぜ反対されるか判らないまま、ムキになった彼女の意志もあってなかば駆け落ち気味に入籍して同居することに。
結婚してからはやや気まぐれなところもある彼女に振り回されるとこともあるけども、仲良くやっていたつもりだったが、彼女がどうも秘密を隠しているようで…。
みたいな展開。
彼女が隠していたことは何か、というのが大きなどんでん返しの肝なんだけども、この小説はむしろ手前の恋愛〜結婚のドタバタの辺りを楽しんでおく作品のような気がする。
_ 上田早夕里『リリエンタールの末裔』(ハヤカワ文庫JA)
初めて読んでみたんだけどもしっくりこなかった。しっくり来た人は読み飛ばして下さい。
「リリエンタールの末裔」
両腕以外の腕が背中にある一族の少年が、グライダーでの飛行にあこがれて、お金を貯めて、背中の腕を操縦桿として使えるグライダーを作って貰う話なのだが、その少年(というか手に入れた時には少年では無くなっているけど)の腕が。。。と言うところだけは特異なんだけど、空を飛ぼうとしてるのは彼だけじゃなくて元々都市の富裕層は同じようにグライダーで飛んでいて、主人公だけが特殊でもないその他大勢なので、今ひとつぴんとこなかった。
「マグネフィオ」
これは他の作品とは違っていて、仮想の技術を突き詰めたらこんなコミュニケーションもあり得るという思考実験みたいな感じで、これだけは読んだ甲斐があった気がする。
ただし、主人公(語り手)は結局手が届かないことが判った、という挫折を伴う話なので、読んでいて楽しいわけでは無い (^_^;)
「ナイト・ブルーの記録」
インタビューの時のときに相手が長々と語ったことの記録、というような形式を取ってるのだけど、モノローグが合わないのか、読んでると眠くなってきてしまった。
「幻のクロノメーター」
これも同様に、相手が長々と語ったことの記録形式で、連チャンなのか…、と思ってしまった。それと、この内容ならこんなに長くなくてもいいのでは無いか、とも思った。